企業の人材育成や社員のスキルアップを支援するために、TOEIC® Listening & Reading Testのスコア向上に役立つレベル別英語学習法をご紹介します。本記事では、400点から700点を目指す各段階に応じた効果的な学習アプローチを体系的に解説。単なる知識の習得ではなく、英語を「使える技能」として定着させるための習慣づくりや、実践的なトレーニング方法に焦点を当てています。日々の英語学習を成果につなげるためのヒントとしてお役立てください。
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本当に勉強していますか?
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効果的なレベル別学習法の解説を始める前に、読者の皆様に尋ねたいことが一つあります。それは「本当に英語の勉強をしていますか。」ということです。よく「どのようにしたら英語ができるようになりますか。勉強の仕方を教えてください。」と質問を受けますが、「では、今はどのような勉強をしていますか。」と聞き返しますと「よい方法が見つからなくて特に何もやっていません。」と答える人が多いのに驚きます。
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毎日学習する
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TOEIC®テストは単語量や文法知識を計る、いわゆる大学などの入試テストとは全く異なります。「知識」は詰め込むことはできますが、コミュニケーション能力は「技能」です。「絵画」や「ピアノ」が一夜にして上手になることが期待できないのと同様に、一夜づけや本の丸暗記で得点が上がることは決して期待できません。「英語を母語とする人たちが毎日使う日常的な英語」を聞けたり、話せたり、読んだりできる能力をつけない限りこのテストの得点は伸びません。それには、毎日英語に接して「英語を日常的なレベルで使える」ようにする必要があるのです。「使える」ようにするには、「知識」のレベルを越えて無意識のうちに英語が出てくるような、「技術」や「技能」のレベルになるまで練習するしかないのです。上達するには毎日練習するしかないのです。
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楽をしては身につかない
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練習や学習には「苦痛」はつきものです。楽しく、しかも効果的に学習するのが一番いいのですが、限界があることはいうまでもありません。一度はどこかで苦痛に耐えて学習しない限り、飛躍的な上達は望めません。ある程度のレベルになれば、さまざまな情報を日本語と同じように英語で手に入れることができるようになれば、これほど楽しくて役に立つものはありません。
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とはいうものの、同じ時間だけ学習するのでしたら、やはり苦痛はできるだけ小さく効果はできるだけ大きな方法で学習するのに越したことはありません。そこで、これからはレベル別に効果のある学習法を解説していきます。多くはどのレベルでも共通に有効な方法です。どのレベルの人も全て一読されることをお勧めします。
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400点をまずクリアするには
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1. 集中して学習する習慣を身につける
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「語学はだらだら読んだり聞いたりするだけでは身につかない」ことを再認識してください。自分のレベルに合ったもの、あるいはそれよりやや難しい教材で、「内容を理解する目的で」「意識を集中させて学習する」習慣を身につけることが語学学習の鉄則です。内容を理解するために意識を集中させて学習することは非常に疲れますが、これが短い学習時間で内容の濃い学習をする秘訣です。
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2. Listening Sectionのスコアを上げる
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このレベルの多くの人にとってリスニングが異常に難しく感じられる原因は、聞こえる単語の難しさや文法の複雑さではなく、生の英語のスピードが非常に速く感じられ、スピードに圧倒されてしまうという心理的なものではないでしょうか。どのようにしたら速い生の英語に慣れることができるのでしょうか。それは速いスピードで話される自然な英語を多量に聞くことです。自分のレベルに合った、しかもできるだけ自然なスピードで話される英語を聞くことです。
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3. やさしい問題を確実にできるようにする
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TOEIC®テストで一番やさしい問題はListening Sectionの写真描写問題です。問題集などではまず写真描写問題に焦点をしぼって、繰り返し聞き取り練習をしてみてください。この最初のセクションが簡単だと感じるようになれば、すぐに400点に近い成績があげられるはずです。
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500点をクリアするには
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1. 一応の会話表現を身につける
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TOEIC®テストで500点をとるには、Listening Sectionで2番目に易しい応答問題で60%の正解率を確保する必要があります。言葉は意味を持って初めて言葉となります。一人で勉強する時は、できるだけ状況や話す相手を思い浮かべながら「意味のある」練習をする習慣をつけることが大切です。
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2.「直読直解」、「直聴直解」の練習をする
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TOEIC®テストの特徴の一つはその問題量の多さにあります。これを限られた短い時間内に解くのですから、英語をそのまま理解する能力が要求されます。簡単な英語は、英語で理解できるようにならないと、この時間との戦いには勝てません。500点突破は、時間との競争にうち勝つことにかかっています。
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3. 学校文法の基礎のみを総復習する
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TOEIC®テストのReading Sectionで出される問題は、学校で習う文法とはやや異なるものです。どちらかというと文法を「応用して」、正確な文を組み立てることができるかどうかを計ろうとする問題です。文の枠組みがわからない限り、文章理解があやふやなままになりがちです。
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4. 読むことを好きになろう
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英語で文章を読むことは辛いものです。まず、この段階では活字に対する前向きな態度だけでも養いましょう。前向きに読み物にぶつかってゆくことが大切です。リスニングを上げることがこの段階では大切ですが、リーディングに対する心の準備を始めることも大切なのです。
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600点をクリアするには
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600点をクリアするためにはListening SectionとReading Sectionのバランスをとる必要があります。どちらか一方の能力だけではTOEIC®テストで600点を越えるスコアを上げることは非常に大変です。
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1. 難しい問題に挑戦
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500点の人と600点の人の違いは、会話問題と説明文問題の出来が10%違うということです。要するに、そろそろ難しい問題も半分程度は解答できなければ600点をクリアできないということなのです。
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2. 多くの練習問題を解く
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会話問題と説明文問題は、問題が聞き取れたと思っても、正しい選択肢を選ぶことができない限り得点には反映されません。この作業がスムーズにできるようになれば600点はすぐそこにみえてきます。そのためには、多くの問題にあたって質問の形式やその種類などに慣れ、さらに限られた時間内に解答ができるよう、時間の感覚を肌で感じておくことが必要です。
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3. 読解力をつける
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TOEIC®テストの前半はListening Sectionですが、問題を読む作業が含まれますから、実際にはTOEIC®テストの60%以上は読解力が得点を左右すると言えます。実は読解力はTOEIC®テストでは一番重要な英語能力なのです。しかも、速読、速解力が必要とされます。
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4. 音声教材を有効に使う
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音声教材を繰り返し聞くだけでは、そろそろ飽きてくるのがこの500点台のレベルの人ではないでしょうか。そこでいくつかユニークな音声教材の使い方を紹介します。
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Shadowing
音声と同じスピードで、音声のすぐ後を追う練習です。
Speak before the 音声
トランスクリプトを音声より先に読み、後から音声を聞きます。
Repeat a little later
できるだけ聴いた内容を頭の中に留めておく練習です。
Read with the 音声
トランスクリプトを見ながら、音声と全く同時に読む練習です。
Memo
音声を聞いた後、理解できた内容を書きとめる練習です。
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700点をクリアするには
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600点台といえば、そろそろ英語を使って業務をすることが「苦」でなくなる段階です。伸び率は落ちますが、ここでやる気をふりしぼって学習する人のみが700点の大台に到達するのです。
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1. 語彙力の強化は多読で
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TOEIC®テストで700点をクリアするためには、速聴、速読力をつけることはいうまでもありませんが、語彙力が大きな差となって得点に反映されてきます。語彙力といっても、どちらかというと「知的語彙」を増やす必要があります。ビジネスの契約書などに頻出する単語です。単語を増やすには単語集などで重要単語を丸暗記する方法も考えられますが、すでに学校教育を終えて社会に出た人の中で、やみくもに単語を暗記できるという人は少ないはずです。語彙力を確実に伸ばすのでしたら、文脈の中で自然に覚えていくことを勧めます。つまり、わからない単語に赤線などを引いて覚えようとしてはいけません。多読をとおして、内容を理解する中で、無意識のうちに単語を増やすのです。時間がかかりそうで、実はこれが一番効果のある方法です。自分の単語の覚え方を見つけて継続してください。
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2. 短文穴埋め問題で100%の正解率を目指す
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TOEIC®テストで700点突破をねらうには、「写真描写問題」でミスをなるべく減らすと同時に、Reading Sectionでは、比較的解答しやすい「短文穴埋め問題」で100%の正解率を目指す必要があります。Part VIの「長文穴埋め問題」やPart VIIの「読解問題」で80%以上もの正解率を確保するのはなかなか難しいものです。そこで、是非皆さんには、「短文穴埋め問題」の方で100%をねらうことを勧めます。
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3. TOEICプラスαを
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TOEIC®テストは英語によるコミュニケーション能力を測定するための試験です。よって、英語でのコミュニケーションと名のつく言語活動に自らをさらすことで、間接的にTOEIC®テストのための学習をしていることにもなります。基礎があればその上に情報を積み重ねていくだけです。情報があれば、それを確実なものにしていくだけなのです。その「積み重ね」と「確実化」がこの「プラスα」学習なのです。
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プラスαに限っては、集中して学習する必要はありません。知的なレベルの英語に慣れる意味で触れているだけで結構です。一語一句全てを理解することは、英語学習を仕事としない限り時間的に不可能です。このレベルの人は、ニュースを聞き流したり、興味のある記事を読むだけでも、潜在意識の中に単語や表現が蓄積されていくはずです。
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おわりに
ここに取り上げた学習方法はあくまで最大公約数的な学習方法です。誰にでも役に立つはずですが、誰にでもぴったりと当てはまるものではないはずです。この中からあなたの信じる外国語習得方法を見つけて継続してください。
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最後にもう一つ。TOEIC®テストのための学習方法を中心に解説しましたが、外国語学習の本来の目的は外国語を使って海外の人々とコミュニケーションをとることです。TOEIC®テスト学習をしながらも、その結果がもたらす本来の目的に近づいた時の「楽しさ」を常に頭に浮かべて学習してみてください。英語学習が楽しくなるはずです。
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TCLC「TOEIC®対策 TOEIC®100点アップの学習法」より抜粋
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